鑑識課は「きつい」って本当？死体現場のリアルと精神的タフさの真実

「刑事部の鑑識課」――ドラマで見る彼らは、時にクールで、時に鋭い洞察力で事件の真相に迫りますよね。私も30代の今、かつては警察官、特に鑑識課という響きに強い憧れを抱いていました。しかし、その裏側で「地味できつい」「凄惨な現場に立ち会う」という声も耳にし、漠然とした不安を抱えていたんです。

本当に事故現場や事件現場で遺体と対峙し、目を背けたくなるような状況に立ち会うのか？そして、その中で精神的なタフさがどれほど求められるのか。もしあなたが今、私と同じように鑑識課のリアルを知りたいと願っているなら、ぜひこの先を読み進めてください。憧れだけでは見えない、現場の真実をお伝えします。

ドラマだけでは見えない鑑識課の「もう一つの顔」

私たちがテレビで目にする鑑識官は、まるで魔法のように証拠を見つけ出し、スマートに事件を解決へと導く存在です。しかし、警察官を目指していた頃の私は、心のどこかで「本当にあんなに格好良いだけなのだろうか？」という疑問を抱えていました。その疑問は、警察官の道を諦めた後も、ずっと私の中に残り続けていたのです。

鑑識の仕事は、事件現場や事故現場で、残された微細な証拠を一つ一つ丹念に拾い上げること。その中には、当然ながら、凄惨な状況や、遺体と向き合わなければならない場面が数多く含まれます。ドラマでは一瞬で終わる描写も、現実では数時間、時には丸一日を費やすことも珍しくありません。この「地味で過酷」という言葉の裏には、私たちの想像をはるかに超える現実が横たわっているのです。

「遺体は事件の証人だ」刑事部の友人・高橋が語る現場のリアル

そんな私の疑問に、具体的な答えを与えてくれたのは、刑事部に勤務する友人、高橋（仮名）でした。先日、久しぶりに会った彼に、私は思い切って鑑識課の仕事について尋ねてみました。彼の言葉は、私の甘い認識を根底から覆すものでした。

「鑑識はな、決して格好いいだけじゃない。覚悟が必要な仕事だ」

高橋はそう切り出すと、静かに語り始めました。

「遺体は、事件や事故の『証人』なんだ。その証人が最後に何を伝えようとしているのか、五感全てを使って聞き取るのが鑑識の仕事だ。腐敗臭、血液、損傷…目を背けたくなるような光景も、冷静に、客観的に記録していく。最初は誰もが戸惑う。吐き気を催すこともある。でも、それが日常になるんだ。現場で感情的にならないこと、そして帰宅したらしっかり切り離す訓練が何よりも重要になる」

彼の言葉は、私の心を深くえぐりました。「ああ、私には無理かもしれない…」そんな弱気が頭をよぎったのも事実です。しかし、高橋はさらに続けます。

「ドラマのような派手さはない。地道な証拠収集が9割だよ。小さな指紋一つ、繊維一本が事件解決の糸口になる。地味な作業の先に、真実がある。それが鑑識の醍醐味だ」

精神的なタフさだけじゃない！鑑識官に求められる資質とは

高橋の話を聞いて、鑑識官に求められるのは、単なる精神的なタフさだけではないと痛感しました。もちろん、凄惨な現場に冷静に対処できる精神力は不可欠です。しかし、それ以上に重要なのが、「徹底した観察力」と「冷静な判断力」、そして「強い使命感」だと彼は教えてくれました。

徹底した観察力: どんなに小さな証拠も見逃さない集中力と、全体像を把握する視野の広さ。
冷静な判断力: 感情に流されず、客観的に状況を分析し、最適な行動を選択する能力。
強い使命感: 地道で過酷な作業の先に、被害者の無念を晴らし、社会の安全を守るという強い意志。

これらの資質は、一朝一夕で身につくものではありません。日々の訓練と経験、そして何よりも「なぜ鑑識官になりたいのか」という強い動機が、困難な現場を乗り越える原動力となるのです。

鑑識課を目指すあなたへ：現実と向き合う覚悟

鑑識課の仕事は、決して楽な道ではありません。しかし、その厳しさの先に、他のどの仕事にも代えがたい「真実を明らかにする」という大きな達成感と社会貢献があります。高橋の言葉は、私に鑑識課の現実を教えてくれるとともに、その仕事の尊さを改めて感じさせてくれました。

もしあなたが鑑識課を目指すなら、ドラマのイメージだけでなく、その「きつさ」や「地味さ」、そして「凄惨な現場」という現実と正面から向き合う覚悟が必要です。そして、その覚悟を持てた時、あなたはきっと、鑑識官としての第一歩を踏み出せるでしょう。もし不安があれば、警察学校の教官や現職の警察官に直接話を聞く機会を探してみるのも良いかもしれません。